製品情報
特長
高精度な排気流量計測
エンジンの排気流量の計測では、ガス温度が高い(数百℃)、脈動が激しいといった条件に加えて広いダイナミックレンジが要求されます。Sokkenはこれまでのエンジン吸入空気量計測の経験を生かし、排気流量計測においても高精度の計測を可能としました。排気ガス流量計VAV-EGF6はベンチュリ式流量計を基本として次のユニークな機能を備えます。
可変断面積ベンチュリシステム
一般のベンチュリ式流量計では差圧が流量の2乗に比例するため、差圧計のダイナミックレンジや圧力損失が大きな問題となります。排気ガス流量計VAV-EGF6ではベンチュリの絞り部の断面積を可変とすることでこの問題を解決しました。排気流量の変化に応じて可動コアの位置を調整し、ベンチュリ絞り部の断面積を高速制御します。この可変ベンチュリ機構により、装置全体の圧力損失は0.5kPa以下でありながら、最小測定流量と定格流量の比は約30倍の広いダイナミックレンジを実現しました。
脈動減衰装置(サージチューブ)可変ベンチュリの上流にはサージチューブ(実用新案登録、第3085960号)と呼ばれるシリコン薄膜で構成される脈動減衰装置が設置されています。この装置が排気脈動を効果的に吸収し、流量計算時の2乗平均誤差を小さくします。特にアイドリング時や単気筒エンジンなどの脈動の激しい条件下での排気流量計測の精度を高めます。 右の動画では、サージチューブの白い膜の伸縮によって排気圧力の変動を吸収している様子が観察できます。 |
仕様
測定原理 | 可変スロート断面積ベンチュリ方式(特許登録、5089340号) |
定格流量 (1気圧,20℃時) |
2.0, 3.0, 5.5m3/minの3機種 最大測定流量は定格流量の約1.5倍です。その他の流量はご相談ください |
対応排気温度 | 常温~400℃ |
測定精度 | 表示値に対して±3% |
精度保証範囲 | 定格流量の1/30~定格流量まで |
圧力損失 | 0.5kPa以下 |
応答時間 | 200ms |
信号出力 | アナログ0-10V |
寸法,重量 | W620×H1250×D600mm,140kg |
電源,エア | AC100V/9A,工場エア0.2MPa(パージ用) |
接続形状 | 入口:JIS50A5Kフランジ 出口:JIS100A5Kフランジ |
アプリケーション
- モーダルマス計測
- マイクロトンネルの制御
- バッグミニダイリュータの制御
FAQ
出力(表示)される流量の単位は体積流量ですか?質量流量ですか?
1気圧,20℃換算された体積流量を出力(表示)します。
排気温度が400℃を超える場合でも測定は可能ですか?
400℃を超えると脈動減衰装置が損傷する恐れがあります。接続配管を放熱性の高い金属フレキ管などで延長して排気温度を下げてご使用ください。
脈動減衰装置のシリコン薄膜の耐久性はどのくらいですか?
排気の熱による劣化がありますので、200時間毎の交換を推奨しています。
ギャラリー
計測原理
可変ベンチュリ式流量計の計測原理はベルヌーイの法則に基づくベンチュリ管の式を基本としています。一般のベンチュリ式流量計の流量係数は固定ですが、可変ベンチュリ式流量計の場合、流量係数は可動コアの位置により変化します。
流量が少ないときはコアの位置は右側にあり、ベンチュリのスロート部の断面積は最小です。流量が増えるに従い、コアの位置は左側に移動し、スロート部の断面積は増加します。コアの位置は排気流量の変化に応じてリアルタイムに制御されます。この可変ベンチュリ機構を用いることで測定可能な流量範囲が広がりました。
また、ベンチュリ式流量計では逆流を含む脈動流を正確に計測することは困難です。そこで本流量計ではベンチュリの上流に設置した脈動減衰装置がエンジンの排気に含まれる脈動を吸収し、逆流を解消することで精度の高い流量計測を実現しました。
特長
- 可変ベンチュリ機構による広い測定範囲
一般のベンチュリ式流量計では差圧が流量の2乗に比例するため、差圧計のダイナミックレンジや圧力損失が大きな問題となりますが、可変ベンチュリ機構により、装置全体の圧力損失は0.5kPa以下でありながら、最小測定流量と定格流量の比は約30倍の広いダイナミックレンジを実現しました。
- 脈動減衰装置による安定した計測
可変ベンチュリの上流にはシリコン薄膜で構成される脈動減衰装置(サージチューブ)が設置されています。この装置が排気脈動を効果的に吸収し、流量計算時の2乗平均誤差を小さくします。特にアイドリング時や単気筒エンジンなどの脈動の激しい条件下での排気流量計測の精度を高めます。
性能データ
上のグラフはディーゼルエンジンの排気流量を計測したものです。赤線で示す可変ベンチュリ式排気流量計の計測値と破線で示す吸入空気量から計算した排気流量がよく一致していることを示しています。
関連文献
可変断面積ベンチュリ式排気流量測定装置、自動車技術会学術講演会前刷集 No.982(1998)
計測事例
ディーゼルスモークのモーダルマス計測
モーダルマス計測とは、排気流量と各成分の濃度を掛け算して時間積分をすることで、自動車などからの排出ガスに含まれるCO2やNOxなどの質量を計測するものです。従来のCVS法と比較して次のようなメリットがあります。
- 応答性が速いため過渡運転時の排出挙動の把握が容易
- 装置コスト、運転コストが安価
今回の計測では排気流量計とスモークメータを組み合わせ、ディーゼルエンジンから排出されるSoot(すす)質量の計測を行いました。比較のためマイクロトンネルおよび希釈トンネルによるフィルタ重量法の結果との比較も行いました。
使用機器
排気流量計:排気ガス流量計VAV-EGF
スモークメータ:リアルタイム黒煙質量濃度計LEX-04B
試験エンジン:ディーゼルエンジン(排気量4000cc)
試験車両:小型貨物車(4800ccディーゼル)
計測結果
試験内容
エンジンベンチおよびシャシダイナモにおけるJE05モード試験
※グラフをクリックすると拡大します。
エンジンベンチにおけるSoot排出量の時間変化
排気流量(緑)とSoot濃度(茶)を掛け合わせ時間積分したものが積算Soot排出量(赤)です。このようにモーダルマス計測を行うことで過渡運転時の排出挙動の把握を容易に行うことできます。
マイクロトンネルおよび希釈トンネル(フルトンネル)とのSoot量比較
モーダルマス計測によるSoot排出量の積算値と従来のフィルタ重量法によるSoot排出量(フィルタに捕集されたPMからSOFを除いた重量)の比較では良い相関が得られており、エンジンやDPFの研究開発における用途に適しています。
関連文献
ディーゼル微粒子特性の直接連続測定、自動車技術会学術講演会前刷集 No.17-08(2008)